「チョコをください」
「なんで?」
「なんでって、バレンタインだからです」
「なんでお前にやらなきゃいけないの?」


 それは、バレンタイン一日過ぎの、ある日。





むくろのばれんたいん。







「バレンタインが過ぎてから一日が経過しましたね」
「そうだな」
「僕はまだ恋人に贈り物をしてもらってないんです」
「残念だな」
「綱吉君、僕の恋人が誰か知っていますか?」
「そんな物好き知らないよ」

 二月十五日。宿題をするツナと、勝手に家に上がり込んで椅子を占領している骸という異様な光景がツナの部屋では展開されていた。

「……綱吉君」
「何?」
「ぶっちゃけチョコください」
「いきなりぶっちゃけたな」
「チョコをください」
「なんで?」
「なんでって、バレンタインだからです」
「なんでお前にやらなきゃいけないの?」

 毒舌に返され続け、それでも骸は全くめげない。

「昨日から言ってます」
「時間の無駄だね」
「今日も言ってます」
「さっさと帰れ」
「なんでそうやって綱吉君は僕に冷たいんですか」
「お前に優しくする理由があるのか」
「ありますよ」
「なんだよ」
「僕と君は恋人です」

 ツナは完全無表情で、骸を振り向いた。

「いつそうなった」
「出逢った瞬間二人は既に」
「お前ほんと殺すぞ」
「やれるものならどうぞ」

 呆れ半分に黙ったツナに、「なら仕方ありません」とぼやきながら骸は鞄からある物を取り出す。

「これをやりましょう」
「…………」

 普通の、平凡な、ポッキーの一箱だった。
 一瞬で思考が骸の思想を理解し、ツナは頭が痛くなった。

「……あのさあ」
「はい、なんでしょう」
「俺男なんだけど」
「知っています。今から確認しますか」
「なんで!」
「僕はいつでも君とそうしたいと思っています」
「……〜っ」

 思いっきり睨み付けられても、骸は全く怯まずにこにこわざとらしく笑ったままである。

「君は怒った顔もそそりますねえ」
「黙れ変態」
「黙りません君が僕とポッキーゲームをするまで」
「一生来ないよそんな出来事」
「おや、一生ですか。ですがそれでは手を繋ぐ、キス、そして……という展開に繋がりません」
「お前ほんと大丈夫か」
「もう手は繋ぎましたけどね」
「いつ!? お前と俺がいつ手なんか繋いだ!!」
「とりあえずポッキーゲームをしましょう。端から端……」
「答えろよ何誤魔化してんだ! ってえ、ちょ、本気? 待っ……」





 多分今年も、もらえません。







 当サイトでは最も数の多い骸ツナ小説ですが、明るい雰囲気のものはこれが初めてです。
 夫婦漫才みたいで書いていて非常に楽しかったです^^
 バレンタイン記念骸ツナ小説、読んでくださりありがとうございました!







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