「雲雀さん、あの……」
「何」
「……その」
「だから、何?」
それは、バレンタイン一週間前の、ある日。
ひばりのばれんたいん。
学校の帰り道。雲雀と二人きり。
緊張に潰れそうになりながら、ツナは先刻の出来事を思い出していた。
『ツナ! ツナはチョコとかくれんのか?』
『え、俺? うーん……母さんが作ってたら、手伝うかなあ』
『本当ですか十代目! 俺にくれますか!』
『俺にもくれなーツナ! 楽しみだぜ!』
『そんな期待しないでよ……』
『他には誰にやるんだ?』
『え……山本たちくらいだよ』
放課後、獄寺や山本とそう話していた。
のを。
恋人である雲雀に、聞かれていた。
「ばれんた、」
そうぽつりと口にした途端、ぴたりと雲雀の動きは停止した。ツナの動きも恐怖で固まる。
ツナの手を自らの手に絡め、静かに問う。
「もしかして僕にはくれない気だったの」
恋人からの詰問にツナは、勢いよく首を振る。
「そんなことは、ないです、けど」
「けど、何」
「い、いえ。何というか……」
「?」
端正な顔に見返され、赤くなるのがばれないように俯きながら、ツナはぼそぼそ呟く。
「だ、だって雲雀さん、もてるじゃないですか」
「…………」
「だから、俺なんかが、その……あげたりとかするのは、迷惑かなって」
無言の雲雀から、重圧感が押し寄せてきたような錯覚がし、ツナは頭を下げる。
「ご、ごめんなさい! 俺、ほんと、」
じんわりと涙を零したツナに、苛立たそうに眼を細めた雲雀は、絡めた手を解かないままに聞く。
「僕以外の奴にはあげる気だったんでしょ?」
「そ、そんなこと…………え?」
ツナに対し、何に雲雀が怒っているのか。
それに気づいた瞬間、雲雀はツナの目尻にキスをした。
「ひ、ばりさ……っ」
恥ずかしさに赤くなり、いやいやをするツナにむっと唇をへの字に曲げる。
「何、嫌なの」
「嫌じゃないですけど、恥ずかしいです!」
「じゃあ別にいいでしょ」
「でも、」
「僕以外の奴にはあげないでよ」
「…………はいっ」
また泣き出しそうになるツナの頬に、獣が親愛を示すかのように噛みつきながら。
「約束だから!」
初ヒバツナ小説でした。
個人イメージで雲雀さんは顔に噛みつく気がします。勿論ツナだけに。
バレンタイン記念ヒバツナ小説でした。
バレンタインシリーズは四本目のこのお話で終了です。
全て読んでくださった方、一本でも読んでくださった方、ありがとうございました! 宜しければご感想など^^
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